第28の伝承

アブー・ナージフ・アルイルバード・イブン・サーリヤ―アッラーよ彼を嘉したまえ―の権威による。彼は伝えている。

アッラーの御使い―アッラーよ彼に祝福と平安を与えたまえ―は、われわれの心を畏怖の念で満たし、眼から涙を溢れさせるような説教をなされた。そこでわれわれはお願いした。「アッラーの御使いよ、いまのお話はまるで訣れの説教1のようでした。何とぞ私どもに良き忠告をお与え下さい。」すると御使いは言われた。「私は忠告しよう。至大至高のアッラーを畏れ敬い、たとえ卑しい奴隷がお前たちの長となっても、耳を貸し、従うのだ。お前たちのうちで〔長〕生きする者は、いずれさまざまな意見の相違を眼のあたりにするであろう。だからお前たちは私の言行2、正しい導きを受けて正道を行くカリフたち3の言行を離れてはならない。是が非でもそれに縋りついていることだ4。新たな創りごとには気をつけねばならない。新しい創りごとは〔異端者の〕勝手な考え5であり、それはみな道を踏み迷わせるものなのだから。あらゆる誤謬は地獄の劫火のものなのだから。6」

この伝承はアブー・ダーウードとアッティルミズィーの2人が伝えている。アッティルミズィーは、これが優れた正しい伝承だとしている。


註:

1 この世に永遠の別れを告げる者の最後の説教の意。

2 言行と訳したsunnahは、本来「道」「踏み従われるべき道」の意。イスラームにおいて、例えば預言者の語った言葉、行った行為は特に後のムスリムの規範となる重要なものであるため、そのような意味を込めた「言行」と訳される。

3 正道を行くカリフたちとは、一般に預言者を継いだ四人の正統カリフをいう。この場合「正統」という訳は適切でないため、原義を取った。

4 原文では「歯でしっかりと食らいついていろ」の意。

5 bid’ahは悪い意味での「改革」、そこから「異端」「異端者の教義」の意がある。

6 原文は「道を踏み迷わせる者は劫火の中にある」の意。