第19の伝承

アッバースの息子、アブ・ル・アッバース・アブドッラーフ―アッラーよ彼ら両名を嘉したまえ―の権威による。彼は伝えている。

ある日私が預言者―アッラーよ彼に祝福と平安を与えたまえ―の後ろ1に座っていると、預言者は私にこう言われた。「いいか若者よ、お前にいくつか教訓2を与えてやろう。〔いつも〕アッラーを念ずるのだ。そうすればアッラーはお前をお護り下さるだろう。アッラーを念ずれば、お前はアッラーを眼の前に見ることができる。願いごとがあればアッラーにお願いし、頼みごとがあればアッラーに助けを求めるのだ。いいか、もしも人々が集まってお前を何かの手段で助けようとしても、結局彼らはアッラーがお前のために予め定められた3手段で助けるにすぎない。人々が寄り集ってお前に何か害を加えるにしても、アッラーが予め定められたことで危害を与えるだけだ。〔定めを記した〕ペンはすでになく、〔それが書かれた〕頁はもう乾いてしまっている。4」

これはアッティルミズィーの伝えている伝承であるが、彼はこれが優れた正しい伝承だとしている。

アッティルミズィー以外にも〔これに類する〕つぎのような伝承がある。

アッラーはお前がいまだに苦境にあると認めて下さるであろう。いいか、お前にふりかかったことはお前を苦しめるためのものではなかったし、お前を苦しめたことはお前にふりかかるためのものでもなかったのだ。勝利は忍耐と共にあり、安堵は悩みと共に、楽は苦と共にあることを胆に銘じなければならない。


註:

1 同じ乗り物の後ろの意

2 原文は「言葉を教える」となっている。意訳。

3 原文は「書かれた」となっている。

4 すでに定められてしまったことは変更がきかないという意味。