イマーム・アンナワウィーの序文

讃えあれアッラー、万世の主、諸天と大地をくまなくしろしめし、万物を宰べられる御方。まぎれもない徴、明白な証をもって正しい導きを広め、宗教の掟を説くために遣わされた御使いたちの派遣者。アッラーよ、これらすべての御使いに祝福と平安を授けたまえ。また私は、その恵みたもうすべての恩籠のゆえに心からアッラーを讃え、いやます恩恵、慈愛を乞い願う者である。またアッラーの他に神はなく、アッラーこそは並びない唯一の神にして、凌威この上もなく、惜みない恩恵と赦しの与え手であることを誓言するとともに、われわれの長ムハンマドがアッラーの下僕、御使いであり、その賞で愛したまう者であると証言する。ムハンマドはいつの世までも奇蹟たりつづける尊きクルアーンと、導きを求める者みなに光明を投げかけるその言行のゆえに、格別の栄誉を授けられた、よろずの被造者に優る者である。われわれの長ムハンマドは、その確たる言葉、宗教的実践に示した寛容の精神において比類のない者である。アッラーよ、彼とその余の預言者たち、御使いたち、ならびに彼らの一族のすべてと他の敬虔な信者たちに祝福と平安を授けたまえ。

次に引くアッラーの御使い―アッラーよ彼に祝福と平安を与えたまえ―の言葉は、アリー・イブン・アブー・ターリブ、アブドッラーフ・イブン・マスウード、ムアーズ・イブン・ジャバル、アブッ=ダルダーウ、イブン・ウマル、イブン・アッバース、アナス・イブン・マーリク、アブー・フライラ、アブー・サィード=ル=フドリー ―アッラーよ彼らすべてを嘉したまえ―の権威に基づき、さまざまな伝承の鎖を経て種々のかたちで伝えられている。

「われらが民のため、その宗教に関する40の伝承を記憶し、伝えた者は、審判の日にアッラーにより法学者、宗教学者の一員に加えられるであろう。」

他の伝承によれば〔後半の部分は〕、「アッラーは審判の日に彼を法学者、宗教学者となされるであろう」、となっている。またアブッ=ダルダーウの伝承では、「審判の日に私は彼のとりなし手、証人となろう」、イブン・マスウードの伝承では、「彼は伝えられるであろう。『望みの門から楽園に入れ』」となっている。イブン・ウマルの伝承は、「宗教学者の一人として登録され、来世において殉教者として生れかわるであろう」としているが、伝承学者たちは、この伝承には数多くの鎖があるが、信憑性の弱いものであるという点で意見が一致している。

宗教学者たちアッラーよ彼らを嘉したまえは、このような趣旨から無数の著書を著している。私の知る限りでは、最初にこのような著作〔40の伝承の編著〕をものしたのはアブドッラーフ・イブヌ=ル=ムバーラクであり、ついで神性について通暁した学者イブン・アスラム・アットゥーシー、アルハサン・イブン・スフヤーン・アンナサーイー、アブー・バクル・アルアージュッリー、アブー・バクル・ムハンマド・イブン・イブラーヒーム・アルイスファハーニー、アッダーラクトニー、アルハーキム、アブー・スアイム、アブー・アブドッラフマーン・アッスラミー、アブー・サイード・アルマーリーニー、アブー・ウスマーン・アッサーブーニー、アブドッラーフ・イブン・ムハンマド・アルアンサーリー・アブー・バクル・アルバイハキー等、上代、後代を通じて無数の人々がこうした著述を行なっている。

私は、これらイスラームの卓越した指導者、宗教の護り手を模倣して40の伝承を編むにあたり、至高のアッラーの良き導きを求めた。

宗教学者は、それが善行に関わるものである限り、信憑性の弱い伝承をも実行に移すことを許している。ただし私はそのような伝承によらず、御使いアッラーよ彼に祝福と平安を与えたまえの正しい伝承にのみ依拠した。〔その中には次のような言葉がある。〕「なんじらの証人には、その場に居合せぬ者に〔真実を〕伝えさせよ。」また御使いアッラーよ彼に祝福と平安を与えたまえの言葉には、つぎのようなものもある。「アッラーよ、私の言葉を耳にしてそれを心に誦んじ、耳にしたそのままを伝える者〔の顔に〕輝きを与えたまえ。」またある宗教学者たちは、宗教の基本要項またはそれから分れた諸細目、例えば聖戦や禁欲的修行、あるいは立居振舞いの規範、説教といった特定の問題に関して40の伝承を編んでいる。これらの著述はすべて正しい意図のもとに成されており、このような意図をもつ者はアッラーの御心にかなう者といえよう。ただし私は、この40の伝承の編著を先にあげたものよりー層重要であると考えている。40の伝承は上述の趣旨すべてを包合し、同時にその一々の伝承は、宗教学者が「イスラームの要」、「イスラームの大半」、「イスラームの3分の1」等と述べたような、偉大な宗教的礎の一つに当るものでなくてはならない。さらにこの編著においては、各々の伝承は真正疑うべからざるものであり、その大半がアルブハーリーとムスリムの『サヒーフ』から引用さるべきであろう。引用にあたり私は、アッラーの御心のもとに暗誦を容易ならしめ、その利益をさらに一般的なものとするために、〔煩雑な〕伝承の鎖を記すことをせず、後に難解な表現を明らかにする註釈を付した。

来世に心を至す者はすべて、ここに引かれた諸伝承に精通しなければならない。これらはきわめて重要な事柄を含んでいるとともに、〔アッラーにたいする〕従順の諸相に関する警告を備えもっているのだから。問題を熟慮する者にとっては、ことは明白である。ひとえにアッラーを信じ、アッラーのみに縋り、帰依したてまつる。讃嘆と恩寵の主にして、成功と〔誤謬を許さぬ〕清浄さの源たる御方に。