第1の伝承
信者たちの長[1]、アブー・ハフス・ウマル・イブヌ=ル=ハッターブ[2]―アッラーよ彼を嘉したまえ―の権威[3]による。彼は伝えている。私はアッラーの御使い―アッラーよ彼に祝福と平安を与えたまえ―が言われるのを聞いた。
行為とは意志にもとづくものであり、人はみな自らの意志した事柄の所有者である。したがってアッラーとその御使いのために聖遷に参加した者は、アッラーとその御使いのために聖遷[4]を行なったのであり、現世の利益、結婚相手の女のために聖遷に加わった者は、それらのために聖遷を行なったにすぎない。
この伝承は、伝承学の大家である2人のイマーム、アブー・アブドッラーフ・ムハンマド・イブン・イスマーイール・イブン・イブラーヒーム・イブヌ=ル=ムギーラ・イブン・バルディズバ・アルブハーリーと、アブ=ル=フサイン・ムスリム・イブヌ=ル=ハッジャージ・イブン・ムスリム・アルクシャイリー・アンナイサーブーリーの各『サヒーフ』[5]中に記載されている。ちなみにこの両『サヒーフ』は、著述[6]の中でももっとも信憑性の高いものという評価をうけている。
註:
[1]1 アミール・ル・ムウミニーン/信者たちの長とは、カリフたちに与えられる呼称。
[1]2 第二代目正統カリフ
3 直接預言者から伝承を耳にしている人物を権威とした。伝承は普通以下のような鎖(伝承27註(3)参照)を持っている。「この伝承はEにより伝えられ たものである。EはDから、DはC、CはB、BはAから伝え聞き、Aは預言者が言われるのを聞いた。」この場合、もちろんAが権威となる。ち なみに本書では煩雑を避け、多くの場合B以下は省略されている。
[1]4 聖遷はマッカ(メッカ)からアルマディーナ(メディナ)へのムハンマド(彼の上に祝福と平安あれ)の移住を指す。
5『サヒーフ』は「真正伝承大成」の意。本文中にあるように、アルブハーリーとムスリムの『サヒーフ』は伝承学中で欠かすことの出来ない重要な集大成。
[1]6 ここでは伝承集成の著述をさす。