アナス―アッラーよ彼を嘉したまえ―の権威による。彼は伝えている。
私はアッラーの御使い―アッラーよ彼に祝福と平安を与えたまえ―がこう言われるのを聞いた。
至高のアッラーは申された1。
アーダムの息子よ2、お前が私を呼び求め、私に〔心から〕願うかぎりは、お前のしでかしたことを赦し、大目にみてやろう。アーダムの息子よ、お前の罪が空の雲に届く程であっても、私に赦しを求めさえすればお前を赦してやろう。アーダムの息子よ、お前がこの地球と同じほどの大罪を犯して私のところにやってきても、私の姿を見て私に似たものは存在しないと思うなら、それ3と同じ赦しを与えてやろう。
これはアッティルミズィーにより伝えられているが、彼によれば正しく優れた伝承である。
註:
1 これも聖なる伝承である。第24の伝承註(1)参照。
2 アーダムは人類の始祖といわれるアダムのこと。アーダムの息子はアーダムの裔、すなわち個々の人間を指す。
3 それは地球を指す。アッラーの赦しの寛大さを示す伝承である。
アムル・イブヌ=ル=アースの息子・アブー・ムハンマド・アブドッラーフ―アッラーよ彼ら両名を嘉したまえ―の権威による。彼は伝えている。 アッラーの御使い―アッラーよ彼に祝福と平安を与えたまえ―は言われた。 愛着までもが私のもたらしたものに相応しくならないかぎり、本当の信者とはいえない1。 これは、『キターブ=ル=フッジャ』2からとった正しい鎖を持つ正しく優れた伝承である。 3 註: 1 愛着と訳した語hawanは、愛情、欲望、快楽等の意味がある。愛着は訳語でも一番控えめなもの。とにかくそれは人間の意志で統御しにくいものであるが、愛着までがイスラーム精神にかなっていない限り、本当の信者とは言えないの意。 2 アブ=ル=カーシム・イスマーイール・イブン・ムハンマド・アル=イスファハーニー〔ヒジュラ暦535年没〕の著書。証明の書の意。 3 著書、アンナワウィーは本書の題名を「40のハディース」としているが、更に2つの伝承を付け加えている。 |
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ウマルの息子1―アッラーよ彼ら両名を嘉したまえ―の権威による。彼は伝えている。
アッラーの御使い―アッラーよ彼に祝福と平安を与えたまえ―は、私の肩に手をかけて言われた。
この世においては、異邦人か旅人のように暮らせ2。
またウマルの息子1―アッラーよ彼ら両名を嘉したまえ―は、よく次のような言葉を口にしていた。
朝にはタベを期待するな3。タベには朝を期待するな。病いのために健康をふりあて、死のために生をふりあてよ。
この伝承はアルブハーリーが伝えている。
註:
1 第2の伝承中(1)参照。
2 束の間の現世に執着せず、永遠の生である来世にこそ執着せよ。
3 善行を一日延ばしにしてはならない。朝思い立ったことを夕方すればよいなどと後回しにしてはならない。この伝承は全て善行を主題としている。「病のために・・・」は次のように解釈される。健康な時には様々な宗教的義務をきちんと果たすことが出来る。だからその間に来世の報奨を期待できる善行を積んでおけ。
アッバースの息子―アッラーよ彼ら両名を嘉したまえ―の権威によれば、アッラーの御使い―アッラーよ彼に祝福と平安を与えたまえ―は言われた。
アッラーは私のために、私の民の過ち、怠慢、気のりのなさをお赦し下さった。
イブン・マージャ、アルバイハキー等によって伝えられた優れた伝承である。
アブー・フライラ―アッラーよ彼を嘉したまえ―の権威による。彼は伝えている。
アッラーの御使い―アッラーよ彼に祝福と平安を与えたまえ―は言われた。至高のアッラーはこう申された。
私の友に敵意を示す者には、自分は誰に対しても戦いの宣言をする。私の気に入ることをして私に近づこうと望む下僕1は、自分に課された宗教的義務をきちんと果すことだ。定められた義務以外の良い行ないに努める下僕は、ますます私に近づき、ついには私の愛をかちうるであろう。そして私が彼を愛するようになれば、私は彼の聞く耳、彼の見る眼、彼の打つ手、彼の歩く足となろう。彼に願いごとがあれば私はかならず叶え、彼が避難所を求めればかならずそれを用意してやるだろう。
この伝承は、アルブハーリーの伝えているものである。
註:
1 アッラーの下僕、つまりムスリムのこと。
アッバースの息子―アッラーよ彼ら両名を嘉したまえ―の権威による。彼は至大至高の主が預言者―アッラーよ彼に祝福と平安を与えたまえ―に語られたこととして、預言者からこの伝承1を聞いている。栄誉かぎりなき至高の主はこう申された。
アッラーはさまざまな善行、悪行を定め、ついでそれを詳しく説明された。そして善行をしようと思ったがそれを果さなかった者のためには、完全な善行を1つ行なったものと〔帳簿に〕書きとめ、善行をしようと思いたちそれを実行した者のためには善行を10、その700倍、さらにはそれ以上行なったものとして書きとめる。また悪行を思いたったが、それを実際に行なわなかった者のためにも、完全な善行を1つ行なったと書きとめるが、悪行を思いたちそれを実行した者には、悪行を1つ行なったと書きとめるだけである。
これは、アルブハーリーとムスリムの2人がこのままの形でおのおのの『サヒーフ』中に記載している伝承である。
註:
1 これも聖なる伝承である。第24の伝承註(1)参照。
アブー・フライラ―アッラーよ彼を嘉したまえ―の権威によれば、預言者―アッラーよ彼に祝福と平安を与えたまえ―はこう言われたとのことである。
信者からこの世の悩みを一つでもとり除いた者には、アッラーが審判の日の悩みを一つとり除いて下さるだろう。気の毒な人を優しく面倒見た者には1、アッラーが現世と来世で優しく面倒を見て下さる。ムスリムをあつく庇護した者には、アッラーが現世と来世であつい庇護を与えて下さる。アッラーはその下僕が兄弟を助けるかぎり彼に援助の手をさしのべられる。また知識を求めて道を歩む者には、アッラーが平坦な楽園への道を用意して下さる2。アッラーの家の1つに集まってアッラーの書を朗読し3、たがいにそれを学びあう者たちの上には、かならず静けさが訪れ、慈悲が彼らをつつみ、天使たちにとり囲まれた彼らの名は、アッラーが自らの近みにとどめおく者4として読みあげられるであろう。自分の行ないで道5を進めない者は、血筋をもってしても急ぎ行くことはできない。
ムスリムはこの伝承を、このままの形で伝えている。
註:
1 原文は「生活に苦しむ人を楽にしてやる者には」の意。
2 原文は「楽園への道を容易にして下さる」の意。
3 アッラーの家は例えばマスジドを指す。アッラーの書は「クルアーン」のこと。
4 アッラーは気に入られた者を自分の側にとどめおかれる。
5 例えば「楽園への道」。
アブー・フライラ―アッラーよ彼を嘉したまえ―の権威による。彼は伝えている。
アッラーの御使い―アッラーよ彼に祝福と平安を与えたまえ―は言われた。
たがいに妬みあってはいけない。値をつり上げあってもいけない。憎しみあい、背を向けあってもならない。値を下げあってもならない。アッラーの下僕たちよ、お前たちはたがいに兄弟でなければならない。ムスリムたる者は他のムスリムの兄弟なのだから。兄弟を虐げたり、見捨てたり、騙したり、軽蔑してはならない。敬虔さはここにあるのだ。―こういいながら御使いは自分の胸を三度指差された― 一人前の男にとって、ムスリムの兄弟を軽蔑するなどということは、悪行以外の何であろうか。すべてのムスリムは他のムスリムにとり侵すべからざるものである。彼の血も、財産も、名誉も。
これはムスリムによって伝えられた伝承である。
アブー・サイード・アルフドリー―アッラーよ彼を嘉したまえ―の権威による。彼は伝えている。
私はアッラーの御使い―アッラーよ彼に祝福と平安を与えたまえ―がこう言われるのを聞いた。
お前たちの誰でも、悪行1を見かけたら自分の手でそれを変えるようにするがよい。それができなければ自分の舌で。それもできなければ心で。だがそれしかできない者は、もっとも信仰の弱い者2。
これはムスリムの伝えている伝承である。
註:
1 「忌むべきこと」「宗教的観点から避けられるべきこと」の意。
2 原文では「最後の場合は信仰心の最も弱い現れ」といった意。
アッバースの息子―アッラーよ彼ら両名を嘉したまえ―の権威によれば、アッラーの御使い―アッラーよ彼に祝福と平安を与えたまえ―はこう言われたとのことである。
人々が望むだけのものを与えられるとするならば、彼らは他人の財産や生命まで要求するだろう。ただし要求する者には明らかな証拠が必要であり、拒絶する者には誓いが必要である1。
アルバイハキー等はこの伝承をこのまま伝えている。またこの一部は2つの『サヒーフ』2中に記載されている。
註:
1 要求する側、拒否する側いずれにも正しい根拠がなければならないの意。
2 アルブハーリー、ムスリムの伝承集成の題名。